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駅前でよくあること

改札を抜けると女の人と目が合った。私の首くらいの身長で、ぱっちりとした目の女の人と。彼女は私の存在に気付くなり駆け寄ってきてファーストコンタクト「神様を信じますか?」ああ、宗教か... 彼女の見た目からそのような幸福を科学するような、胡散臭さは一切感じられなかった。一目見ただけでは、彼女はカフェの店員のようでもあった。ただそのような特定の胡散臭さに感化された人間特有の、あの嘘みたいに澄んだ瞳の色だけが私を不快にさせた。

「神様を、信じますか?」という彼女の問いかけから私はただ曖昧に相槌を返す聞き手の役を演じるしかなかった。ただ、駅から家までの帰り道はどのみち一人だったし、彼女も大声を出して私に教えを説くようなタイプではなかったので特に何も考えずに「そうですね」「分かります」と言えばよかったのだ。彼女は幼児に語りかけるような、優しい顔をして私に、日蓮の話やアベの政治や第三次世界大戦のことを話してくれた。その間、私は相槌を打ちながらこの女の人も誰かと、セックスをするんだろうか。と思っていた。ただそれだけを考えていた。こんなに純真な目をして布教に勤む彼女もたまにはセックスしたり、セックスされたり、するのだろうかと思うと何故か不思議な気持ちになった。ただ、理想や未来や来世の話をする彼女から、鼻につく安酒のにおいがしたので、どこか俗世っぽさを感じたのかもしれない。

神を信じるか。私にとっては正直いうとどうでもいい投げかけだ。ただ神を信じているだろう彼女の、偽りのない語り方は嫌いではなかった。

最後の信号で意外にも彼女は別れを告げてくれた。予想と反して淡白な別れだったので私は、もっと真剣に話を聞いてあげればよかったなと、思った。