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夏について

私が一番夢中になる時間は夏です。

といっても西瓜やプールが好きな訳ではなしに、それが私に与えてくれる途方もない10代のエネルギーが心地よくてたまらないのです。夏は非常に短命であり、気がつけば終わっている季節です。なので私は夏を短命でひどく湿り気のある生き物として捉えています。俗っぽく言うなら、"同じ夏は2度とは来ない"のです。

私たちはどうして夏に幻想を求めるのでしょうか、たしかに冬に幻を抱いていても凍えるだけでしょうが。
例えば私たちは夏に「白いワンピースを着た少女」を求めます。あるいは彼女は麦わら帽子をかぶっているかもしれません。彼女は8月の刺すような太陽光線に晒され、おろしたての白い肌を焼かれながら私たちを待っています。私はまだ出会えたことがありません。きっと彼女は秋には死んでしまうのです。

夏は終わっていくものではなく、はっきりと終わりがあります。夏の最後の日と翌日の朝とでは、ひぐらしの横隔膜の震わせかたも、積乱雲の厚みも、全く別のものになります。出来の良い偽物になるのです。その時になってようやく10代のエネルギーは失われ、私は1歳ほど年を取るのです。そして間もなく途方もない後悔の感情が私を覆いつくし、安定した季節が北のほうからやってくるのです。