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このまま眠り続けて死ぬ

「冬は、死ぬ」といった表現が美しい。 「春は、犯される」のが正しい。 「夏は、 ー」眠る前にそんなことを考えたせいで、そんなことのせいで寝られなくなってしまったじゃないか。 「外は寒い。きっと外は寒いから。」ベッドから降り、おろしたてのコート…

寝るのが惜しくてベッドから飛び出して十分で書き終わるようなそんな夏の終わり

あれだ、適当に夜更かししちゃってベッドに入ったはいいけどやっぱり何かやり残したことがあるような気がする病。絶対早く寝たほうがいい奴。 油蟬もほとんど死んでしまってふと夜中にマンションの下の公園から一匹の蝉の生き残りがか弱く鳴いてるのが聞こえ…

マンボウのいる水槽

水族館には黒くて巨大な魚がいた。みすぼらしい腹鰭と窪んだ眼窩を絶え間なく動かしながら、彼は円筒状になったアクリルの水槽をぐるぐる泳いでいた。夏も冬も、閉館の時刻が過ぎても彼の目的はただ、アクリルのカーブに沿って水中を時計回りに泳ぎ続けるこ…

春の頭痛

ココアが甘い。スプーンでカップに残る氷を溶かしながら僕はあの子が来るのを待っていた。売店で買ったココアの味はデパートに流れている演歌と調和していない。デパートの7階は古い。古くて硬い椅子に座って僕はあの子を待つ。今日あの子はどんなお洒落をし…

跳躍

川のほとりで幸せな夢を見ていた。夢の中で10歳若くなった僕と君は、お互いのどんなことも魅力に見えるような初恋の時期だった。あいまいなキスをした後、君の唇が何の熱も帯びてはいない事に気付き僕は夢中から覚醒した。現実の世界が息苦しいほど夢の中で…

賀正 未明

未明を知らせるベルが短く鳴った。僕は少し寒くなりすぎたのでストーブの火をつける。部屋にはさきほどこぼした灯油と食べかけのミルクチョコレートの匂いがただよっている。時計の秒針だけが正確に僕1人に2015年が終わったことを伝えようとしている。台所は…

26時のコンクリートについて

気がついたときに私の体はマンションの鉄扉をすり抜け、26時のコンクリートに立っていることがあります。26時はコンクリートが昼の太陽熱を放出し終える時間なので、とりわけ冬になるとそこは誰も居ないスケートリンクのように見えます。私はまだ定まらない…

夏について

私が一番夢中になる時間は夏です。といっても西瓜やプールが好きな訳ではなしに、それが私に与えてくれる途方もない10代のエネルギーが心地よくてたまらないのです。夏は非常に短命であり、気がつけば終わっている季節です。なので私は夏を短命でひどく湿り…